株式会社小堀哲夫建築設計事務所は代表の小堀哲夫氏が2008年に設立した建築設計事務所です。このプロジェクトでは、長期間に渡り小堀さんと対話を重ねながらブランディングを進めました。Webサイトとデザインアセットを刷新した後も、デザイン顧問としてサポートを続けました。

Tetsuo Kobori Architects — Information Architecture for Architects

このブランディングは、株式会社小堀哲夫建築設計事務所(TKA)の代表作となる「NICCA INNOVATION CENTER」が竣工され一般公開されるタイミングに合わせておこなわれました。その後、代表の小堀さんが2017年の日本建築学会賞と日本建築大賞(JIA grand prix)の二大建築賞で史上初のダブル受賞をしたり、2018年の日経アーキテクチュアが選ぶアーキテクト・オブ・ザ・イヤー2位へランクインするなどした活躍にも貢献できたのではないかと思います。

Tetsuo Kobori Architects website

好奇心とアーキテクト精神

プロジェクトの開始当初に注力したのは、国内外の建築に関する文脈の整理と、それに対するTKAのポジショニングでした。しかし、文脈のなかで考えるのではなく、小堀さんが設計のときに描くスケッチのように、彼の抱くイメージを言語化する作業の方が力になれることに気がつきました。そして、なにより惹かれたのは、小堀さんの素直な驚きに導かれる好奇心と、自分の感性に響くまで思索を止めないアーキテクト精神でした。

また初期に見せていただいた、小堀さんとほかの建築家とのコミュニケーションも、非常に参考になりました。とくに年配の建築家とのやりとりは、メールよりも葉書でコミュニケーションをとるのことが多いそうです。そのいくつかを見せてもらったのですが、文面には大した用件が書かれておらず、絵の内容や質感によって多くの情報量がやりとりしているように感じました。

イメージをイメージのまま伝える

この絵葉書によるコミュニケーションは、ピーター・ズントー(ペーター・ツムトア)の建築を撮影した杉本博司の写真を思い出させました。それらの写真は建築を撮ったものとしては珍しく、まったくピントが合っていません。しかし、鮮明に建築物を写すよりも、写真から佇まう空気感を想像させる方が、より正確な現象として伝えられているように感じられるのです。

そんな経緯もあって、このブランディングでは、アーキテクトの言葉にならないイメージを、言葉ではなくイメージのまま伝えることを目指しました。実空間と情報空間はまったくの別物ではなく、どちらもわたしたちの身体が実感をともなって経験するものです。だから、平面のデザインのレイアウトを内観したときも、小堀さんが設計する建築と同じような印象になることを心がけました。

Tetsuo Kobori Architects grid system

情報空間に宿る作家性

当初は国内向けに紙のメディアで展開することを考えていたのですが、海外からの案件受注が多くなってきたため、日英の言語でWebサイトをリニューアルすることになりました。強くシンプルな構造、ミニマルなナビゲーション、静かな余白、淡い光と影、グリッドの上のリズム。情報空間にアーキテクトの作家性を宿らせるために、ポートフォリオだけではなくアーキテクトが体験した情景も、フラットにレイアウトすることにしました。

ロゴにも使われた書体は、パートナーの神村さんによるデザインで、今から約100年前にCobden Sandersonが主宰していた「Doves Press」という出版社のセリフ体の骨格に着想を得たサンセリフ体です。単純な合理性のみを目指した工業的なサンセリフ体ではなく、アーツアンドクラフツの時代精神も反映したもので、「自然の中にいるよりも深く自然と関わることができる建築を目指したい」と語るアーキテクトの信条を表しています。この質感は、TKAが設計する建築物から感じられるものでもあるのです。

ルーツとなったブランドArchimesh

このプロジェクトのご縁が成立したのは、同じく神村さんと組んで立ち上げに参画した金属素材ブランド「Archimesh」が成功して、建築業界で注目されていたからでした。ヒカリエなどの建築素材として使っていただけるだけでなく、アパレルの店舗の装飾や雑誌『装苑』で写真撮影に使われたり、東京大学のパビリオン展などの産学連携プロジェクトにも採用されるなど、ブランドとして広がりを見せていた「Archimesh」が小堀さんの目に止まり、このプロジェクトへとつながっていったのでした。

Scope of work

Concept Making
Creative Direction
Copywriting
Information Architecture
Content Editing

Client

Tetsuo Kobori Architects

Year

2014–2017

Team

Concept Making, Creative Direction, Information Architecture: Hiroshi Obayashi (OVERKAST, Inc.)
Art Direction: Munehiro Machida (NSSG Inc.)
Design: Makoto Kamimura (NSSG Inc.)
Web Development: Masayuki Emi

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