enfant(アンファン)は関西を中心にプチシュークリームなどの小さなおやつ菓子を製造・販売している洋菓子店。OVERKASTでは全面的なブランドリニューアルをサポートして、創業時から変わらない部分と新しい取り組みの両方を表現として再構成しました。

enfant — Petits choux à la crème

量り売りのプチシュークリームで知られるenfant。このプロジェクトは、enfantの事業展開に合わせたリブランディングを目的としてスタートし、OVERKASTはコンセプト設計から、ロゴや理念の見直し、コーポレートサイトの設計・制作、メディア運用やパッケージデザインのディレクションをおこないました。

小さいものの強さ、相反するものの同居

店舗販売だけで成り立っていた時代から情報環境が刷新され、人々との出会い方や記憶のされ方は時代とともに変わってきました。それでもenfantは変わらないものを大事にしながら、新しい場所で新しい関係性を築いていく。そんな前提からプロジェクションして、今回のリニューアルでは、幼いまま成熟することを意味する「ネオテニー」をブランドコンセプトにしました。

これはフランス語の“enfant”の意味が「子供」であること、主力商品のプチシュークリームが小さいこと、庶民的な商品として愛らしい記憶を残していること、そしてこれからの事業成長と人々との成熟した関係をかけ合わせたメッセージになっています。

懐かしくて新しい。小さいけどおいしい。気軽に買えて体にやさしい。手作りだけどお手軽価格。国内の良質な原料を使ったフランスの伝統的な製法。そんな相反する価値を両立させるenfantらしさから生まれたコンセプトでした。

コンセプトと戦略の結びつき

ブランドコンセプトの「ネオテニー」が意味する「幼さ」と「成熟」。「幼さ」は小ささ、弱さ、懐かしさ、庶民的であることなどのイメージとして、主にイメージ戦略に。また、「成熟」は長年の熟達したコミュニケーション能力として、主にコミュニケーション戦略に結びついています。

とくに今回のコミュニケーション戦略では、リアル店舗以外のECサイトやソーシャルメディアなどの環境を考慮して、新しいユーザー像を設計しなくてはなりませんでした。それぞれのユーザーとのコミュニケーションプロセスを考え、その上でアンファンらしさを体現しながら理想的な関係構築へとつながる場所として、各メディアのあり方を考えていきました。

OVERKASTでは、Webサイトとパンフレットの設計のほか、ソーシャルメディアやパッケージデザインのディレクションと運用方針の策定をおこないました。

懐かしく新しいデザインエレメント

刷新したビジュアルアイデンティティは、懐かしさと新しさが同居したブランドコンセプトを体現したものになりました。なぜなら、前回のリニューアルで一度手放した創業当初のロゴマークやカラースキームを調整して再利用したからです。

書体として採用したSabonのルーツは、enfantと同じくフランス生まれのGaramond。カラースキームとしては、シュークリームのカスタードを連想させるクリーム色とフランスの伝統的なナショナルカラーであるブルーを使用。

また、ロゴマークの中心に配置されている市松模様は、日本の文様にインスパイアされてフランスで利用される「ダミエ」と呼ばれるものです。フランスで「反映」や「拡大」を意味する模様であることと、5つの正方形が並んだ最小の構成要素がenfantで量り売りされるプチシュークリームの最小ロットと同じであることを確認して、過去のビジュアル要素を再解釈しました。

創業時の意志を取り戻しつつ未来へと向かう。ここには相反する時間が同時に流れているのです。

新旧ロゴマークの比較

ブランドらしさの根拠を記す

今後の姉妹ブランドの立ち上げ予定を見越して、今回はマスターブランドのenfantを軸に、ブランド展開できる設えが必要でした。enfantとは違うアイデンティティを持ちながら、強い関連性があり、イメージとしては地続きで、同じ空間で同居できる。簡単にまとめると、こんな要件です。

それを定義したのが、デザインシステムのガイドラインです。このガイドラインでは、あらゆるものを定理化せず、ストーリーとして未来の人に引き継がれていくような工夫をしました。つまり、細かくルールを制定しすぎないようにして、ブランドの核を守りながらその時々の最適解を探っていける余白を設けたのです。

ブランディングは、その時々の情報環境における人とモノとのコラボレーションや、相反するバランスの中で続いていきます。もし今回のブランディングに作家性のようなものがあるとすれば、ルールだけではなくトーンを重視して、ブランドらしさの根拠として立ち返る場所を物語として記した点ではないかと思います。

Scope of work

Concept Making
Creative Direction
Information Architecture
Project Management
Content Editing
Web Development

Client

アンファン株式会社

Year

2020–2022

Team

Concept Making, Creative Direction, Information Architecture, Project Management: Hiroshi Obayashi (OVERKAST, Inc.)
Research, Graphic Recording: Namino Sakama (OVERKAST, Inc.)
Art Direction, Design: Yuzuru Kurihara
Web Development: Kanako Fukiage

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